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「ハイテク・高機能製品」グループというのは、八〇年代に入って新しく登場した対米輸出商品群で、部品I電子管、半導体など、機械機器、事務用機器と科学光学機器などである。
まず八六年以降、対米輸出全体は数量的には横這いであったが、これは偶然の結果というべきで、品目グループ別に見れば、大きな差が生じていた。
「ハイテク・高機能製品」グループが大きく伸びた反面、「従来型の製品」グループは減少が著しかった。
実際、ドル安による調整効果は、在来型製品においては顕著に現れており、Aの機械機器の場合、対米輸出額は日本側の手取りの実態である円ベースでは、八五〜九二年に五割前後も減少した。
ドル・ベースでも一割減である。
@一次加工晶でも円ベースでは四割強の減少、ドル・ベースでも微々たる増加である。
これを見ても明らかなように、八〇年代まで日本の対米輸出の主柱であったこれらの品目は、八五年以降、数量ベースで厳しい減少に見舞われている。
貿易収支全体に不均衡が居すわって見えるのは、「ハイテク」グループ、つまりBとCの各品目が大きく伸びたためである。
これらの品目は、ドル・ベースだけでなく、円ベースでも、対米輸出額が大きく伸びている。
Bの具体的中身は記憶素子を中心とする半導体、カラー液晶表示装置(JUQ)などであり、八〇年代以降に現れたハイテク部品類である。
またCは、ラップトップ・パソコン、ファクシミリ、光学読み取り装置(スキャナ)などで代表される、ほぼ同時期に現れたハイテク機械類である。
こうしたハイテク部品ないし製品は、米国内の生産基盤がさほど強いとはいえなかった。
対米輸出額が、円、ドルの両ベースで伸びた背後には、数量の趨勢的といってよい増加とそれを促進した価格の下落があっただろう。
こうしたなかで、「在来型」グループに属するAのなかでも自動車は独特の位置にある。
単一品目として対米輸出額、貿易黒字が突出していることは、いまさらいうまでもない。
包括協議において、日本は、アメリカ側の部品購入積み増し要求を、自由貿易に反する「数値目標」として拒否し、交渉はCIAの盗聴事件までひき起こして、いわゆる貿易戦争の象徴ともなった。
自動車は'日本の対米輸出において、一品目で輸出総額の四分の一を占めるほどの巨大輸出産業であったが、米国車の輸入は僅少で、事実上日本からの一方通行であったため、通商摩擦の象徴的品目に祭り上げられて久しかった。
そこで日本の自動車産業は、八〇年代以降、激化した貿易摩擦、対米輸出自主規制への対応として米国現地生産を強化した。
当時は、自動車の現地生産が輸出に置き換わり、八〇年代末には貿易不均衡それ自体が解消するとまで期待されたものである。
ところが、これが八五年以降のドル安で容易に顕在化しない。
現地生産の本格立ち上がりが、八〇年代後半のドル安とぶつかったため、輸入車の建値の引き上げによってドル価格が上昇し、輸出台数の減少を押し隠してしまったのである。
数量ベースでこれを検証しておこう。
対米輸出台数(商用車を含む)は、八六年の三五〇万台がピークで、以降は減少、九二年には一八〇万台となった。
一方この間、現地生産は六〇万台から一七〇万台へと増加している。
このように、輸出台数は激減しているのに、輸出額は建て値の引き上げによりドル・ベースで、九二年には八五年より二割近く増えてしまった。
以上のように、日本の対米輸出は在来型品目で為替調整が進捗している反面、八〇年代後半から現れた新しいハイテク品目の比重が上昇してきた。
日米貿易不均衡の原因としてアメリカ側が取り上げる日本異質論や構造的輸入障壁説は、日米間の不均衡をもたらした原因が、直接には日一米の輸出側であって、米一日の輸入側ではなかったことからしても、論点のすり替えであることは明らかであろう。
少なくとも、こうした議論に耳を傾けることは、日本の在来型産業が被った円高の深甚なダメージから目をそらせることになりかねない。
アメリカ側の対日要求の声が高いために、日本人は、日本のモノ作り部門の健在を信じて疑わないが、実態はまったく違う。
モノ作り部門の勝者は、ハイテク部門の数少ない品目に限られるのであって、在来型の多くの産業は、アメリカ市場に見切りをつけ、あるいは後に詳述するように、アジアへと生産の拠点を移動せざるを得なくなっていた。
その後、日米間の貿易不均衡は、ドル・ベースでは、アメリカ側の五七〇億ドルの赤字(九七年)と居すわったままだが、アメリカの対日要求は、包括協議が一応の決着を見て以来、途絶えている。
アメリカ経済が目に見えた好況の局面に入ったためである。
見えない補助金日本経済の低迷をよそに、アメリカ経済は、九〇〜九一年の一時的リセッションを脱して、九二年から回復に転じた。
九四年には、良好な企業業績を背景に、GDP成長率が三・五%にも加速し、株式市場も高騰を続けた。
米国内では、リストラによる企業の収益基盤の改善や他国を寄せ付けない情報通信技術が、アメリカ経済を新たな成長軌道に乗せた、といった解説が『ビジネス・ウイーク』(例えば九五年十月十六日号)などの紙面を賑わすようになった。
対照的に日本国内では、目もくらむようなアメリカ経済の再生は、自由な市場システムの勝利であって、日本経済もアメリカをモデルとすべきだ、という論調がにわかに活発になった。
アメリカにくらべ日本では、ベンチャー・キャピタルの立ち遅れからベンチャー企業が育たない。
まだまだリストラが遅れている。
規制緩和の遅れ、金融部門はその最たるもの。
当たっている指摘もあれば、そうとはいえない議論もある。
しかし、現象面に目を奪われていては、かえって問題の本質的解決から遠ざかってしまうだろう。
世界最大の純債権国日本と、最大の純債務国アメリカで起きている状況が、まさに正反対だということは、そこに逆方向への巨大な力学が働いていると見るはかない。
日本にとっては、ベンチャー精神やインターネットの普及といった現象ではなく、その力学の本質を理解することが、適切な方策を講じるうえでの前提である。
九〇年代に入って好調なアメリカ経済のなかで、とくに目立つのが、製造業活動の改善である。
もっとも端的な指標として、先の『ビジネス・ウイーク』も取り上げている労働生産性を見よう。
アメリカの労働生産性(非農業部門)は、九〇年三月〜九五年一月について見ると、毎年昇率となり、これは七〇年代、八〇年代のそれを大きく上回っている。
鉱工業生産の増加、単位労働コストの安定も目をひくところで、まさにあの五〇年代の産業国家・アメリカの復活といったところである。
景気回復の引き金となったのは、あきらかに金融緩和であった。
FRBは、九〇年末から公定歩合の引下げを開始し、それ以前には七%であったものが、九二年半ばには三%にもなった。
異例ともいえるこの大幅金融緩和の目的はもちろんアメリカのリセッション脱却であり、政治的には九二年秋の大統領選におけるブッシュ再選であった。
再選は結局実現せず、皮肉なことに、民主党のクリントンが大統領に就任した九三年以降になって、アメリカ経済は回復から上昇への道を歩み始める。
九三年のGDP成長率にはめざましいものがあって、第一四半期の一%弱が期を迫って上昇、第4四半期は七・五%にも加速され、結局、年間では三・二%という数字となった。
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